“#グッチの歴史 Vol.3”
グッチ(GUCCI)はハリウッドセレブを中心に愛されてきたブランドです。『ローマの休日』や『ティファニーで朝食を』で主演女優を務めた「オードリーヘップバーン」や「マリリンモンロー」。ピンクパンサーシリーズで人気を博した「ピーター・セラーズ」もグッチの愛用者です。近年では、キャメロンディアスやニコールリッチー、デビットベッカム夫妻もグッチの愛用者として有名です。
また女優として活躍しモナコ大公レーニエ3世と結婚しモナコ王妃となった「グレースケリー」もグッチを愛用するスーパーセレブです。モナコ皇太子であったレーニエ公の結婚式では引出物の物品にグッチのブランドが利用され、このことにより世界的高級ブランドの確固たる地位を確立し、世界中の憧れのブランドになりました。
1921年のグッチ創業以来、グッチ・グループとしてグループ各社を代表する存在でしたが、1990年代に創業家と経営陣のお家騒動によりグッチの栄光は崩落しました。紆余曲折したそのグッチをデザイナーのトムフォードをはじめとする経営陣の働きにより1990年代後半から2000年代初頭にグッチは再燃しました。
現在はSNSでも多くの、とくに若い世代のセレブやモデル、ファッショニスタがこぞって「グッチ」を身に着けており、今アメリカのミレニアル世代や10代の間で最も人気のあるブランドといわれています。なぜ「グッチ」は若者に支持されるのか、再燃から現在までの歴史からその理由を探ります。
新しい体制
ジャッキーバッグは多くの色とバリエーションで再登場し、大きなムーブメントを引き起こしました。それはグッチ“ It”バッグの時代を開きます。
しかしそのころLVMHMoetHennessy Louis Vuittonの最高経営責任者バーナードアルノーはグッチの敵対的買収に乗り出します。が、割って入った戦略的投資会社PPR(現在のケリング)のフランソワピノーがグッチを買収しグッチ家の手を離れました。
2002年には以前はフェンディのハンドバッグデザイナーであった「フリーダジャンニーニ (Frida Giannini) 」が、ラベルのアクセサリー部門に加わり、トムフォードのデザインチームの一員として大胆なアイデアやデザインに貢献しました。
トムフォード退任と新デザイナー
2004年にはトムフォードがグッチのクリエイティブディレクターを辞任します。彼は1990年代からのグッチ暗黒期ともいわれていた時代の1995年にはミラノコレクションで大成功を収め、 VOGUE最高国際デザイナーなど数多くの賞を受賞しました。その功績は大きく、デザイナーの彼をはじめとする経営陣は暗黒期からグッチを救い出しました。
後任には、レディスウェアのデザイナーに「アレッサンドラファキネッティ (Alessandra Facchinetti) 」が、メンズウェアのデザイナーには、「ジョンレイ (John Ray)」 が就任しました。
2005年、レディスウェアのデザイナーにジャンニーニが就任、トムフォードはデソーレと共にトム・フォード社を設立します。 2006年、ジョンレイがわずか2年間で辞任しジャンニーニが男女ともにプレタポルテのデザインを統括し、2014年末までこの役割を果たしました。
フリーダジャンニーニは、グッチ最高経営責任者であるパトリツィオのパートナーでした。
ユニセフとのグローバル・パートナーシップ
2005年から7年間グッチとユニセフによるグローバル・パートナーシップの一環として継続された「グッチ フォー ユニセフ」キャンペーンと題した取組みを実施しました。アフリカ大陸南東部に位置するマラウイやモザンピークなどの子ども達に初等教育を受けさせることがキャンペーンの目的です。
2009年より南アフリカに規模を拡大し、主にHIV/エイズの被害を受けている子どもたちや孤児に向けての支援活動の一環として教育、保健、保護。さらに衛生面では安全な水の提供に役立てられ、2015年からのキャンペーンスタートでグッチからユニセフへの寄付金は900万ドルを超えました。
毎年グッチは世界約200店舗にてホリデーキャンペーンを展開し、期間中に販売される限定新作バッグの売り上げの25%がユニセフの「スクール フォー アフリカ」プログラムに寄付さます。グッチのデザイナー「フリーダジャンニーニ」は、このホリデーキャンペーン以外にも年間を通し自身がデザインした限定アイテムを多数制作し支援活動に貢献してきました。
この全ての取組みはグッチにとって歴史上大規模な社会貢献を目的としたパートナーシップとして重要な取組みに位置づけてられています。
90年代リバイバルファッションの波に
2010年前半~2015年頃は、“究極のシンプル”であるノームコアファッションが世界的なトレンドでした。ミレニアル世代(1980年代から2000年代初頭までに生まれた人)も10代の若者たちも、大きなブランドロゴが入ったファッションをせず、シンプルな無地のウェアや小物を好んでいました。
「アバクロンビー&フィッチ」は有名な “A&F”ロゴ入りのスウェットシャツの販売をやめ、「コーチ」や「マイケルコース」も、ロゴ入りバッグの販売数を減らしました。ものが溢れている時代に生まれたミレニアル世代は、クールなブランドロゴよりも機能と実用性を選ぶと各メディアが報じました。
2015年 デザイナーを交代
そんな2015年にグッチの新クリエイティブディレクターに就任したのが2000年代初頭からはトムフォード率いるグッチでバッグデザイナーとして経験を積んでいたアレッサンドロミケーレです。
本名 | アレッサンドロミケーレ(Alessandro Michele) |
ニックネーム | ラーロ(Lallo) |
生年月日 | 1972年 |
出身地 | イタリア ローマ |
受賞歴 | CFDA(米国ファッション競技会)ファッションアワード〈国際賞〉 |
ミケーレのファン | エイサップロッキー、ジェームズフランコ、リアーナ、ケイトモス、カイリージェンナー |
@alessandro_michele |
彼は様々な色やパターンを融合させ、90年代に「トムフォード グッチ」と呼ばれ一世を風靡したスタイルを蘇らせました。前任のジャンニーニが打ち出してきたクラシックなスタイルとは真逆のスタイルで、ミケーレ率いる新生グッチを印象づけました。
ファッションのトレンドは繰り返す。とよく言われる事ですが、2016年頃から、これまでのミニマルでノームコアなスタイルから一転、“色も質感も足せるだけ足す”“派手で豪華なスタイル”「マキシマリズム」というスタイルが頭角を現しはじめました。
そのトレンドが決定的になったのが2017年、ミラノデザインウィークでは前年と打って変わって、80年代のポストモダンなデザインや色とりどりの華美なデザインがひしめきました。
この流れにのったグッチはブランドロゴを強調したアイテムを次々に打ち出し、若い世代を夢中にさせました。現在、グッチのロゴ入りウェアを好んで着る若い世代には、90年代のような「高級ブランドを着ている事を見せびらかす=ステータス自慢」という考えはありません。
それよりも、ロゴを主張する、ちょっと前(2015年頃)から見れば成金趣味でダサいアイテムを着こなすセンスやスタイルを押し出しており、ミケーレは、若い世代が好む“あえて”ちょっとダサいデザインをよく理解しています。この流れから”ダッドシューズ”も流行りました。
グッチのブランドロゴをこれでもかと主張し、ちょっとフェイクっぽささえ感じるバブリーなデザインを採用したTシャツは、夏の大ヒットアイテムになりました。
売り上げ好調、最も検索されたファッションブランド1位に
アメリカのコンサルティング会社のベイン&カンパニーが行った調査によれば、2017年の第1、第2、第3四半期のグッチの売り上げのうち、35歳以下の消費者が占める割合は半数以上の55%前後にのぼるといいますから驚きです。
グーグルが年末に発表する過去12カ月の検索ランキング“2017年ファッションブランド部門”では、「シャネル」や「ルイヴィトン」、「シュプリーム」など名だたる人気ブランドを抑えグッチが1位となりました。
オンライン販売での売り上げも伸びており、2018年第1四半期のオンラインでの売り上げは、前の年に比べ3桁増を記録し、これはネットショッピングに慣れ親しんだ若い世代の消費者が、グッチの売り上げに大きく貢献した結果と言えるのではないでしょうか。。。
他にも、俳優でありアーティストでもあるドナルドグローヴァーことチャイルディッシュガンビーノが2018年5月に発表した、アメリカ社会の実像を痛烈に描きそのMVも多きな話題を呼んだ新曲「This Is America」の中で、アメリカの若者を指し「I’m on Gucci(俺はGUCCIを着てるんだ)」と歌ったことでも、今のアメリカで若い世代にリアルに着用されているブランドだという事がわかります。
まとめ
歴史あるブランドであればあるほど、これまでのイメージを変更するのは容易な事ではないはずです。ブランドイメージを大事にしすぎるあまり、いつしか顧客との間に温度差が生まれてしまう事もあります。
そんな中、グッチはこれまでとはまったく異なる世界観を恐れる事なく打ち出し、顧客のニーズを無視する事なく、トレンドに寄り添った商品を手掛けてきました。そんな、変化を恐れないブランドの姿勢に、若い世代は共感するのでしょうか。アメリカおよび世界中の若い世代から熱い視線を集めるグッチから、今後も目が離せません。