カントリー&ナチュラルテイストの落ち着いた雰囲気を演出するのにぴったりなパイン家具。あたたかいぬくもりのある空間にしたいときには、第一候補に上がると言っても過言ではないのではないでしょうか。そんなパイン家具は、色味や木目などの見た目だけでなく、様々な特徴があることをご存知でしょうか。
そこで本記事では、パイン家具の完全ガイドと題して、パイン家具の特徴や、パイン材の種類、メリットやデメリット、お手入れ方法まで徹底解説いたします。
パイン家具とは
そもそもパイン家具とは、後述するパイン材を使用して、オイルやワックスで仕上げる木製の家具のことを言います。木製であるため、木の温もりが感じられることはもちろん、長い年月使用していくことで、だんだんと飴色に色合いが変化していく過程を楽しむことができる醍醐味があり、ナチュラルテイストやアンティークテイストを好む方に人気の高い家具です。
パイン家具の特徴
パイン家具は大きな括りでカントリー家具の中の1種に数えられますが、はるか昔からデザインをほとんど変えることなく、親から子、子から孫へと代々受け継がれてきました。その理由としては、耐久性が高く、色合いや風合いなどの変化を楽しむことができるからということだけでなく、機能性にも優れているという特徴が挙げられるでしょう。もし、見た目や雰囲気だけが良く、実用性がなければ、現代に至るまで愛され続けることはなかったかもしれません。
パイン材の種類
パイン家具を製作する際に用いられるパイン材には様々な種類が存在するので、代表的な8つをご紹介いたします。
- 北欧パイン
- メルクシパイン
- ラジアータパイン
- 欧州赤松
- ポンデロッサパイン
- マリタイムパイン
- サザンイエローパイン
- ロッジポールパイン
北欧パイン
北欧パインとは、別名ユーロパインとも呼ばれ、厳しい寒冷地で育った良質のパイン材です。木目の美しさが際立っており、節が自然で、使用していくとだんだん深い飴色に変化していきます。
パイン材の中で比較するとやや硬めで、重めではありますが、それでもパイン材だけあって、他の木材と比較するとある程度の柔らかさがあります。
メルクシパイン
メルクシパインとは、インドネシアを中心に暖かい東南アジアに生育したパイン材のことを言います。軽くてやわらかいため、女性や子ども用の家具におすすめ。ただ、そのやわらかさゆえに凹みなどの傷がつきやすく、耐久性は高くありません。
また、年輪幅が広く、木肌が粗いという特徴もあります。
ラジアータパイン
ラジアータパインは、アメリカやチリ、オーストラリア、ニュージーランドなどの暖かい地域で生育したパイン材です。木目が均一で、乾燥が早いという特徴を持ちます。特にニュージーランド産のラジアータパインは、植林してから25〜30年経過したものを伐採するというサイクル管理が徹底されていることから、信頼されています。
欧州赤松
欧州赤松とは、ヨーロッパからロシアにかけて生育したパイン材です。粘りや強度が強いことから、家具資材や建築資材として重宝されてきた歴史があります。その名の通り、少し赤みがかった色味のため、レッドウッドと称されることもあるほどです。
また、耐久性が高いため、腐食しづらいという特徴もあります。
ポンデロッサパイン
ポンデロッサパインとは、アメリカから西海岸にかけて生育しているパイン材です。他のパイン材と比較すると松ヤニが少ないという特徴がありますが、衝撃には強くありません。反りやねじれも少ないため、ドアやサッシをはじめ、複雑な家具製作にも向いています。
他にも様々な名称で呼ばれており、ウエスタンイエローパイン、バーズアイパイン、ノッティーパイン、ブリティッシュコロンビアソフトパイン、カリフォルニアホワイトパインなども、ポンデロッサパインのことを表しています。
マリタイムパイン
マリタイムパインは、フランスカイガンショウとも呼ばれる、地中海西部沿岸域に生育するパイン材です。海岸の強い風や紫外線にさらされながら、困難な自然環境の中で育つことから、美しく独特な木目をもち、他のパイン材と比較してもよりはっきりとした木目や節が現れるという傾向があります。
中心付近は淡桃赤色であり、外側にいけばいくほど白になっていく特徴がありますが、経年により濃淡がより出てくることから味わい深いパイン材です。
サザンイエローパイン
サザンイエローパインは、アメリカ南部で生育したパイン材です。世界最高の構造用木材の1つとして数えられるほど高く評価されており、強度や高度に優れています。特に釘などの締め金具を使用したときには、最も高い保持力を発揮するとも言われており、より耐久性の高いパイン家具を製作したいときに重宝されるでしょう。
ロッジポールパイン
ロッジポールパインは、アメリカからカナダの西部に生育するパイン材です。ロッジポールという名称は、原住民が円錐形の小屋(ロッジポール)の骨組みに使用したことに由来します。
やや軽めで耐朽性は低くなっていますが、仕上がりは良いと言われています。
パイン家具のメリット
パイン材の種類について抑えたところで、パイン家具のメリットについて解説いたします。
- 木目が美しい
- 柔らかく触り心地が良い
- 香りが良く癒し効果がある
- 経年による色の変化を堪能できる
- 熱伝導率が低い
- 衝撃吸収性能が高い
- 安価で手に入りやすい
木目が美しい
家具を選ぶ際に、まず重要視されるのは見た目だと思いますが、何よりも迫力のあるナチュラルな木目が美しいことがパイン家具の魅力です。節も多く、木によって異なる味わいを堪能することができます。
木目と節が醸し出す、唯一無二の風合いを楽しめることがパイン家具のメリットの1つと言えるでしょう。
柔らかく触り心地が良い
パイン家具は木材ならではの柔らかさを兼ね備えています。あたたかみもあり、肌触りも悪くありません。普段から触れることの多いチェアやテーブル、ベッドなど身近な家具にもってこいと言えます。
香りが良く癒し効果がある
パインは針葉樹であることから、木の香りがとても強く、目には見えませんが、癒し効果が存在すると言われています。リフレッシュ効果をもたらすフィトンチッドという揮発性の物質を放っているとされ、部屋に取り入れるだけで、まるで森林浴をしているかのような癒し効果を感じることができるでしょう。
また、消臭や脱臭、抗菌や防虫の効果もあるとされ、長く清潔に安心して使用できる家具であると言えます。
経年による色の変化を堪能できる
パイン家具の最も大きなメリットと言っても過言ではないのが、使用すればするほど、色の変化を堪能できる点ではないでしょうか。油分が含まれていることから、だんだんツヤが出てきて、徐々に飴色に変化していきます。
新品を購入してから色の変化を楽しむのも良し。既に飴色に変化した味わい深いアンティーク家具を手に入れるのも良し。好みに合わせて色の風合いを楽しめるのがパイン家具の魅力です。
熱伝導率が低い
パイン家具は、熱伝導率が低いという特徴を持ちます。冬の寒い時期でも冷たさを感じにくいことから、チェアやテーブルなど、直に触れることが多い家具として取り入れるとよりそのメリットを感じられるでしょう。
衝撃吸収性能が高い
パイン家具は、柔らかく、衝撃吸収性能が高いため、チェアとして取り入れると、足腰に負担が少なく、座り心地も良いと言われています。また、子ども用の家具としても安心です。
安価で手に入りやすい
パイン家具は、パイン材自体の流通量が多いことから、他の木材で製作された家具と比較した場合、安価で手に入りやすいというメリットがあるのも、嬉しいポイントです。
パイン家具のデメリット
パイン家具にはたくさんのメリットが存在することをご理解いただけたかと思いますが、一方では多少のデメリットも存在しますので、家具を選ぶ際には頭に入れておきましょう。
- 傷がつきやすい
- 湿度の影響を受けやすい
- シロアリの被害を受けやすい
傷がつきやすい
パイン家具は、その柔らかさゆえに傷や凹みがつきやすいというデメリットがあります。特に小さい子どもや、動きの激しいペットがいるような場合には、注意が必要となります。
しかし、目線を変えれば、傷や凹みも家具の歴史の一部となり、長年使用していくにつれて、味わい深いものとなるので、捉え方によってはそこまでのデメリットにはならないかもしれません。
湿度の影響を受けやすい
パイン家具は、木材であるため、直接濡らさなくても空気中の水分、つまり湿度によって、反ってしまったり、割れてしまったりと変形しやすいというデメリットも持っています。特に新品の場合、乾燥させないように注意しながら使用することが大切となるので、冷暖房の風が直接的に当たることのないような位置に配置することが大切です。
シロアリの被害を受けやすい
パイン家具は、柔らかいことからシロアリの被害を受けやすいと言われています。特にシロアリは、暗くて湿気があるジメジメとした場所に発生しやすいため、部屋の換気を良くし、湿気がたまらないように、細やかな配慮をする必要があります。
手入れ方法(ワックスなど)
パイン家具のメリットデメリットを理解したところで、パイン家具のお手入れ方法についてご紹介いたします。
- 日々のお手入れ
- 半年〜1年でのお手入れ
- シミや傷がついてしまったら
日々のお手入れ
パイン家具を日常的にお手入れする際には、乾拭きあるいは固く絞った水拭きが基本となります。特に何か液体などをこぼしてしまったという場合には、ティッシュペーパーやふきんなどを用いて、なるべく染み込む前にスピーディーに拭き取ることが大切となります。
また、固形状の汚れがついてしまった際には、部分的に少量のぬるま湯を用いて汚れを浮かし、拭き取って、乾拭きすることで水分を取り除きましょう。
半年〜1年でのお手入れ
パイン家具は、半年や1年ごとに本格的なお手入れをすることで、より良い状態で長く使い続けることができます。ワックスを用いることにより、ツヤや撥水効果が復活するのでおすすめです。
例えばオスモカラーのワックスアンドクリーナーを使用する場合には、1平方mに対して小さじ2杯程度を綿布やスポンジに含ませた上で、薄く均一に塗り広げ、2〜3分経過したら乾いた綿布で拭き取るだけ。この一手間が、長く良い状態でパイン家具を保つための秘訣です。
シミや傷がついてしまったら
大切にパイン家具を使用していたとしても、どうしてもシミや汚れが付いてしまうということが起きてしまいます。そういった場合には、#80〜#240番のサンドペーパーを用いて、気になる箇所を研磨することをおすすめします。
また、研磨した後はそのままにせず、今度は#150〜#240番程度のサンドペーパーに、家具と同色のオスモカラーを付けて木目に沿って擦り込みながら塗り付けましょう。その後5〜10分経過したら、綿布を用いて拭き取り、一晩放置し、もう一度拭き取ってお手入れ完了です。
寿命
パイン家具の寿命は、一概に何年とは言えません。柔らかく、傷がつきやすいデメリットがありますが、必要に応じてメンテナンスや修理をすることで、非常に長い間使用できることから、アンティーク家具としても人気が高いという特徴があります。
なるべく湿度が高くないよう、併せて乾燥しすぎないよう、配置する環境を考慮しながら、お手入れを重ね、大切に使用していくことで、自分の子ども、さらには孫の世代へと代々受け継いでいくことができるでしょう。
アイテムごとの価格相場観
パイン家具と一口に言っても様々なアイテムが存在します。ショップによってピンからキリまで価格設定は異なりますが、代表的な家具について価格相場を調査してみましたので、参考にしてみてください。
アイテム名 | 価格相場 |
ダイニングテーブル(4人) | 50,000〜600,000 |
サイドテーブル | 18,000〜300,000 |
キャビネット | 50,000〜250,000 |
シェルフ | 70,000〜150,000 |
上記はあくまで参考価格です。アンティーク家具であるのか、新品であるのか、オーダーメイドであるのか、サイズやデザインなどによって大きく変動するので、いきなり1つのショップに絞り込むのではなく、複数のショップを見比べて、後悔しないように納得のいくパイン家具を手に入れましょう。
オーダーと既製品
パイン家具を購入しようと考えるとき、イギリスやフランスなど、海外で長く使用されてきたアンティーク家具そのものをはじめ、アンティーク家具をリメイクしたり、メンテナンスしたもの、あるいは日本国内でパイン材を使用して1から製作された既製品の中から気に入ったデザインのものを購入するという方法が一般的ですが、特に海外で使用されてきたアンティーク家具の場合、デザインは申し分ないけど、サイズが日本の家屋に合わないというような問題が生じたりします。
そのような場合に、サイズやデザインを自分の好みに合わせて妥協せずに理想の家具を手に入れることができるオーダーメイドという手段があることを覚えておきましょう。
もともとショップに存在する既製品や見本品のサイズやカラー、取手やガラス、蝶番など細かな部分のみを変更したり、そもそも1からデザインを指定してフルオーダーしたりと様々なオーダーメイドの方法があります。
長く使用する前提の家具であればあるほど、頻繁に買い換えるものではないので、本当に納得のいくものを選ばなければ、後悔してしまうでしょう。なるべく妥協せず、デザイン、機能などより理想に近いパイン家具を手に入れることができるように、様々な手段を選択肢とすることが大切です。
まとめ
パイン家具の完全ガイドと題して、本記事では、パイン家具の特徴や、パイン材の種類、メリットやデメリット、お手入れ方法まで徹底解説いたしました。
長く使用すればするほど、風合いが良くなり、愛着が湧いてくるパイン家具。理想の空間をコーディネートするためにも、納得のいく世界で1つのパイン家具を手に入れてみてはいかがでしょうか。