”Archive Store”
今の時代はアーカイブを求めているのだと思います。デザイナーズブランドの歴史もまだ長くなかった1990年代は、常に新しいものを発信できる時代でした。それがだんだんとネタが少なくなり、発信力も弱まってきたました。
だから、新しいクリエイションでも過去のコレクションの再解釈が増えたりと、過去を振り返るような流れになっているのではないでしょうか。その証拠に「マルタンマルジェラ」や「コムデギャルソン」などのデザイナーズブランドはアーカイブ展を開催しています。
そういった流れや海外のコレクターの影響もあって、ラフシモンズのアーカイブをはじめ、他のデザイナーズブランドのアーカイブの価値が高まっています。
このムーブメントに完全にドンピシャにハマったのがこれから紹介する「アーカイブストア」です。
アーカイブストアの概要
店名 | アーカイブストア(Archive Store) |
住所 | 東京都渋谷区神南1⁻12⁻16 和光ビルB1F |
TEL | 03-5428-3787 |
OPEN-CLOSE | 12:00‐20:00 |
公式サイト | archivestore.jp |
@archivestore_official |
2018年の3月にブランド古着店「リンカン(RINKAN)」を運営している株式会社未来ガ驚喜研究所(ミライがキョウキと読む)が国内外のデザイナーズブランドのアーカイブを集めたショップ「アーカイブストア(Archive Store)」をオープンしました。
オープンの背景
未来ガ驚喜研究所社長 齋藤賢吾
私は必死にクリエイションを続けるデザイナーに対するリスペクトの気持ちがある。リンカンもそうだが、これまでのリユースショップは扱うブランドのイメージを壊してしまうことにフラストレーションがあった。
と語り、長年ブランド古着を買い取るなかで稀に何千分の1くらいの頻度で異彩を放つ希少な商品が出てくるが、今ある店舗で販売するは勿体ないと思いストックしていたようです。
未来ガ驚喜研究所社長 齋藤賢吾
最近のファッション業界にフラストレーションを感じている人というか、最近の商品に満足いかない人たちが一定数いて、その人たちが過去にフックしたがっているなというのは感じていました。そういう人たちをキャッチしたかったんです
たしかに、1980年代〜2000年代に活躍したデザイナーズブランドの服や小物を扱っている古着屋が急増しているように感じます。そして、単なる古着ではなく、過去の貴重な”アーカイブ”という付加価値が付き、高額で販売されていることも少なくはないです。
と、ストックしていた希少なアーカイブを販売するために新業態の開発に着手し、商品は揃っていたものの商品に見合った物件や内装、ブランディングなど、さまざま構想を練っていると出店までに2、3年が経っていたようです。
気になる外観と内装
リンカン渋谷店の隣にひっそりとたたずむアーカイブストアは「路面に“どーん”とあってわかりやすい店より、え、ここに入っていくの?ここがお店なの?という経験を味わってもらいたかった 」という社長の思いがあります。
リンカン渋谷店のビルの裏手にある真っ暗な非常階段を降りると薄暗く、廃墟のような雰囲気がこの先に待ち受けるアーカイブに対するドキドキとワクワクが入り混じったような感情に引き込まれます。
ポップアップが行われるスペースは銅製の壁で仕切られています。銅製の壁は経年変化で錆びていき、「アーカイブストア」のコンセプトが一致するという考えのもとこの内装になったそうです。
人気デザイナーファンにとってはまるで夢の国のような店内は鏡張りになっており、ヴィンテージやアートとも異なるアーカイブがところ狭しと飾られている光景はどこか異様な雰囲気をも感じてしまいます。
店の奥には博物館や美術館を連想させるようにオートクチュールの作品が大きなガラスケースの中に飾られています。非売品として展示されているケースも多いみたいです。
この「アーカイブストア」では特定のブランドにフューチャーし、アーカイブだけを集めたイベントや、様々なポップアップイベントも開催しています。珍しいアーカイブだけでなく、コンセプトに忠実でどこか不思議な感覚になる店内は一度入ってみるだけでも価値があるのではないでしょうか。
主として扱うアーカイブ
今、デザイナーやスタイリストなどが数多く来店し、ファッション業界から注目の的である「アーカイブストア」の扱うブランドを紹介しようと思います。ちなみに時期によってフューチャーするブランドやアイテムは少し違うようです。
マルタンマルジェラ(Martin Margiela)
創始者「マルタンマルジェラ」自身の名を冠したブランド「メゾンマルタンマルジェラ」を立ち上げ、2015年に「メゾンマルジェラ」に名を変えました。同ブランドは脱構築を全面に掲げ、世界に影響を与えたブランドです。
「服の意味を問う」などさまざまな変革的なアンチテーゼを行い、どの世代、層にも知れ渡り世界中に多くのファンが存在します。
ディオールオム(Dior homme)
ディオールオムはメンズのディレクションに元イヴサンローランのデザイナーであるエディスリマンを起用し爆発的な大ヒットを記録した伝説的ブランドです。
今ではクリスヴァンアッシュがデザイナーをしていますが今も昔も変わらずモード界を牽引し続けているブランドです。特に「アーカイブストア」では”エディ期”と言われているエディスリマンがディレクションしていた時期のディオールオムを扱っており、2019年3月26日までは阪急メンズ東京でポップアップも行っています。
コムでギャルソン(COMME des GARÇONS)
日本が誇るデザイナーの川久保玲が創設した「コムデギャルソン」はデザインとその表現に対する冒険的姿勢はブランドのフランス語の意に恥じない「少年のよう」なブランドです。
ファッションにおける既成概念をどんどんと打ち壊していったデザインは多くのファッショニスタから支持され「ギャルソン」の愛称で親しまれています。
ヘルムートラング(Helmut Lang)
創業者の名を冠したブランド「ヘルムートラング」の特徴は”ミニマリズム”です。1980年代は極端なまでに強調されたシルエット、派手な色使いと装飾、とにかく派手で奇抜なファッションがメインだったのですがその流れを一気に変えた存在の1人です。
ラフシモンズ(Raf simons)
デザイナー、ラフシモンズの名を冠したブランド「ラフシモンズ」はなんといっても先進的な芸術性の高さが特徴です。ファッション性よりもむしろアート性が強調されたそのデザインは、ありきたりとは程遠い斬新なものが多いです。
色鮮やかで派手なアイテムから、黒を貴重としたダークで落ち着いたアイテムなどのデザインはユースカルチャーの反抗的なエネルギーや音楽、アングラファッションからインスピレーションを受けてデザインされていています。
ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)
ヨウジヤマモトは「ヨウジ」の愛称で親しまれています。ヨウジヤマモトを一言で言えば万人が『黒の衝撃』と答えるのではないでしょうか?
当時、ダークすぎる反抗を意味する色としてタブーとされていた「黒」を全面的に押し出し、ボロ切れのようなルックを展開し、固定概念をぶっ壊したヨウジヤマモトのコレクションは「黒の衝撃」という波紋を呼びました。
まとめ
今のファッションの流れ的には完全にリバイバルの流れのような気がします。特にその流れは顕著でグッチをはじめとしたハイブランドもビッグシルエットや、ショルダーパッドなど80年代、90年代のムーブメントを再燃させようとしています。
その流れも一時のブームとなるでしょうが変わらず評価され続け、これからもかなりの高価で取り引きされるでしょう。買わずとも一度は見に行く価値のある「アーカイブストア」の紹介でした。