”Raf Simos Archive Collection”
ラフシモンズの歴史を振り返ると幾度となく出てきたアーカイブという言葉。
アーカイブの意味は、記録もしくは〔古文書〕保管所となります。じゃあラフシモンズのアーカイブとは?
そうです。ラフシモンズの過去のコレクションのことを指します。その過去のコレクションが『ヤバい』んです。
特にラフシモンズの歴史:後編にも出てきたブランド休止以降の数年いわゆる2000年代前半のコレクションがヤバいんです。ヤバい、ヤバいって言ってても仕方ないんで何がヤバいのか、ヤバい理由を紹介していきます。
ラフシモンズの人気のアーカイブ
ラフシモンズといえば『アート』、『音楽』、『ユースカルチャー』などからインスパイアを受けファッションに落とし込んだコレクションをよく発表しています。このように若い頃に影響を受けたカルチャーや人物をコレクションで表現する手法は今でこそよく使われる手法ですが初期の頃からラフシモンズはよく行っていました。
去年、「サンローラン」を去り「セリーヌ」のデザイナーになったと話題にもなった『モードの帝王「エディ・スリマン」』をはじめ、さまざまなデザイナーが行っているクリエイションの手法ですがラフシモンズは90年代から行っていたということです。
他にも、ルイヴィトンのデザイナーヴァージル・アブローもこの手法でコレクションを手掛けています。
ラフシモンズ復活後の2000年代前半に多く、その時代のコレクションは”神の宿るコレクション”です。
暴動期
”神の宿るコレクション”の中でも特に人気なのはウェールズのロックバンド「Manic Street Preachers」からインスピレーションを受けた2001-2002のA/W通称”暴動期”ではないでしょうか。このコレクションではとにかくレイヤー、レイヤー、レイヤーというルックがかなり目を引きました。ほかにも、フードブルゾンや、ビッグコート、ボンバーJKTのアイテムを多用し、モデルは顔を覆ってランウェイを歩きました。
多大な人気を誇るラフシモンズのアーカイブの中でも伝説と言っても過言ではない”迷彩柄MA- 1”はカニエ・ウエストが着用してからリユース市場で最大$47,000もの値が付けられたりともう意味のわからないことになっています。。。
もうこのコレクションが今でもラフシモンズ史上最強のコレクションになってると思います。
迷彩MA1やフードブルゾンをはじめ、この当時のアーカイブは誰もが欲しがったと思いますし、2019年の現在でも誰もが欲しがっているアイテムだと思います。
さらにこの後のコレクションにもかなりの影響を及ぼします。
特に写真のプリントを張り付ける、ビックパーカー、豪快なレイヤード。この3つの手法は今後もラフシモンズのコレクションでも他のブランドのコレクションでも幾度となく使われて行きます。
このようにラフシモンズはダッドスニーカーブームのトリガー”Ozweego”にしろ幾つもの時代や流行を作ってきたのです。
テロ期
2002年のS/S、通称”テロ期”は名前の通り、テロリスト風のスタイルが特徴的です。顔を隠した赤、白、黒のモデルがたいまつをもって歩いている光景は異常です(笑)
『アメリカ同時多発テロ(9.11)』の起こった約3か月後にこのコレクションが発表されました。がこのコレクションはまるで予知していたかのように何か月も前から考えられていたということに驚きます。
特に、赤のフーディーが人気だったのですが残念ながら日本では販売はされなかったみたいです。
バージニアクリーパー期
2002-2003A/W”VIRGINIA CREEPER期”は自然をテーマにしています。お、珍しく自然からのインスピレーションなんだとも思う方も多いでしょうが、この『バージニアクリーパー』ってアメリカツタの英名なんですけど、キレイな小さな実を成らすのですがこの小さな実には毒があるんです。いわゆる「美しさ」と「脅威」を指した”自然の二面性”っていうのがほんとのテーマです。
この二面性って人間にも通ずるものがあると個人的には思います。どうでしょうか。。。皆さんはどう思いますか?
このコレクションはオーバーサイズが特徴的で、天然素材とフェイクレザーなどの工業用織物を組み合わせ当時の工業用織物の使用を皮肉ったようなコレクションにも見てとれます。
また、森林のブラウンや夜の黒、葉っぱの緑色など自然に関連付けたのテーマに由来したカラーリングを使用しているのも特徴です。
植物が生い茂る場所でコレクションも発表され、自然の壮大さをより強く感じさせるコレクションになっていると思います。
このシーズンには幻と言われる『ネブラスカ』スエットシャツが存在します(笑)ふつうのカレッジスエットなんですが今、探し出すのは非常に困難な故に”幻”と言われています。
消費者期
2003年のS/Sは「消費」というものに対するラフシモンズの考え方をデザインに表したシーズンです。現代の消費主義の思想を再考させる目的のコレクションです。
人気の全面プリントのボンバーJKTを含め、ホワイトのパテントレザーやブラックメッシュなど複数の素材が混合しており、軍国主義とフェティシズムを表現しているみたいです。
このコレクションでは、パラシュートボンバーJKTが有名で、ラフシモンズが1万ドルもの売り上げが見込まれていることを考えていると、大いに予言していたそうです。先見の明もあるようでラフシモンズのスペックには驚かされます。
日本でも人気のK-POPの人気グループ『BIGBANG』のリーダーであり世界中のファッショニスタが注目するアイコン「G-Dragon」氏もフォトブックで着られているようです。
クローザー期
2003-2004A/W通称”closer期”と 呼ばれるコレクションのテーマはイギリスのロックバンド『Joy Division』が関係します。 そのバンドのグラフィックの多くを手がけたピーター・サヴィルのアートワークをファッションに落とし込んだシーズンになります。
『closer』とは『Joy Division』のアルバム名から由来しています。ボーカルの自殺によって活動が休止してしまいますが、その後残ったメンバーで「New Order」を結成しています。
「UNKNOWN PLEASURES」の刺繍の入ったブロードシャツ、権力の美学のプリントがデカデカと叩きつけられたパーカ のほかにJoy DivisionのアルバムのジャケットやNew Orderのアルバムのジャケットをモチーフにしたアイテムがかなりの人気とアイテムになってます。
New Orderの2ndアルバム「権力の美学」 のジャケットがプリントされたコートに至っては200万を超えるとか。。。恐ろしいです。
”closer期”のアーカイブものは2018年S/Sのシーズンに復刻したことでも話題となりました。
宗教期
2004S/Sは”Waves期”とも言われます。ヘルマン・ヘッセの小説「シッダールタ」をテーマにしたシーズンです。シッダールタとは「釈迦」のことを指します。なので通称”宗教期”と言われているんですね。
このシーズンはまだドカッとプレミアがついてるわけじゃないので今のうちに手に入れておくのもありかもしれないです。
特に刺繍が施されたレギオンぺーパーコートはこれからプレミアがつきそうな予感がします。
History of the world期
2005A/Wの通称”ポルターガイスト期”とも言われます。アメリカの映画監督「トビー・フーパー」の1982年の『ポルターガイスト』、とフランスの映画監督「ジャン・ロリン」の1979年の『ファンシネーション』という2つのホラー映画からインスピレーションを得たコレクションです。
特に印象的なのが『ポルターガイスト』カプセルで、ランウェイに登場していないにも関わらずこのシーズンを呼称する時に『ポルターガイスト期』とまで言われるようになりました。
今ではラフシモンズのおなじみになったグラフィックパッチワークが特徴的なコートが高値で取引されています。
『音楽』をテーマにしたコレクション
『音楽』と言ってもラフシモンズは特にロックバンド、エレクトリックミュージックにインスピレーションされることが多かったみたいです。その証拠に1990年代後半にはロックバンドをテーマにしたコレクションを発表しました。
1999年のA/Wコレクションでは1976年に結成されたイギリスのロックバンド、『Joy Division(ジョイ・ディヴィジョン)』をテーマにしたコレクションが発表されました。
当時のメンバーのファッションスタイルを彷彿とさせるシャツにトラウザーズ、全身を黒で覆ったルックが目立ちました。
ショーの始まりと同時に、細身な白いシャツを第一ボタンまでとめて、ワイドパンツにインしたお馴染みのラフシモンズのシグネチャースタイルともいうべきスタイリングがされたモデルたちが大きな旗を両手で持って歩いてきます。
暗い会場に黒のケープのような被り物を被ったモデルに当てられた薄くかすかに光るスポットライトの光は幻想的な美しさもありました。
ジョイ・ディヴィジョンは解散した今でもファッションアイコンやファッショニスタに注目されており、代表作「UNKNOWN PLEASURES」 というアルバムのジャケットには『無線パルス波形』が使用されていますが、このアルバムジャケットをファッションアイコンとしても有名なユーチューバー「カワグチジン」さんもタトゥーとしてなんと手の甲に彫っています。。。
『カワグチジン』さんもルイヴィトンのパーティーに招待されていましたし、『ヒカキン』さんをはじめ、最近ユーチューバーの方もファッションの広告塔として活躍しているイメージが強いです。
他にも、1998年のS/Sコレクション、通称”Black Palms期”言われるコレクションです。
このコレクションは、イングランドのパンク・ロックバンドの『Sex Pistols』をテーマにしたシーズンでした。
足元にはわざと泥で汚されたコンバース。当時のセックス・ピストルズを彷彿とさせるようなルックや、背中に細かく切り込みが入れられたTシャツや、少し幅広の黒いスラックスなどがありました。
特にラフシモンズが好んで使用していたノースリーブもロックバンドの未完成な粗削りな感じを表現していたのかとも思えます。
1998AWはドイツのテクノユニットのクラフトワークのアルバム『人間解体』のジャケットをイメージしたコレクションだというのは音楽好きなら想像しやすいと思います。そこで発表されたルックは強烈です。黒髪でオールバック、赤いシャツに黒いネクタイ、チャコールグレーのパンツを身にまとって歩くモデルたちがどこか異様な雰囲気を放っています。正直、特に特別なデザインが施されたわけでもないデザインですが服を着たモデルたちから放たれるカッコよさは別次元のものでした。
『カルチャー』をテーマにしたコレクション
ラフシモンズは『音楽』以外に、『アート』をテーマにしたシーズンを発表することが多いです。僕は音楽もアートも『カルチャー』の一部だと考えます。
特に多感でありながら繊細で、でもどこか大胆な若者文化といわれる『ユースカルチャー』にフォーカスを当てることが多く、それは、アンダーグラウンド寄りな、どちらかというとサブカルチャーと言われる文化です。
ラフシモンズはごく最近の2018-19A/Wのコレクション、アンダーグラウンドな出来れば誰も触れたくないようなモノをテーマにしました。
先ほども言ったように多感だからこそ興味を持ち、禁止されているものだからこそ手を出してしまうような若者を魅了してします『ドラッグ』をテーマにしたのです。実際のところは1980年代の半ばの演劇『DRUGS』という作品がイメージソースとなっています。
ランウェイの花とカーブはまるで『ドラッグ』に手を染めてしまって陶酔状態で幻覚の見えた若者の世界かのような衝撃的なものでした。
パンツには”LSD”や”XTC”などのドラッグの略語のパッチワークが施され大丈夫なのか。。。と思ってしまうようなコレクションでした(笑)
スタイリングは頭からかぶったものの袖には手を通さずまるで手が通せないほどドラッグの影響があるのかとも思わせるようなダークサイドな表現でした。
特にここ最近で『アート』色が強烈に解き放たれていたのは14-15A/Wだと思います。
アメリカ人アーティストでありラフシモンズの友人であるスターニングルビーと共同制作が行われ、彼のコラージュ作品をそのまま洋服に落とし込んだような大胆なコレクションになってます。
このようなド派手なブリーチ加工のコートもあったりします。
このようにラフシモンズはユースカルチャーからもヒントを得て、自分の世界に、服に落とし込んでいます。
最後に
ラフシモンズの才能は世界中のファッショニスタを魅了しました。その中にはもちろん誰もが知るような著名人もいます。
A$AP Mobからラフシモンズへの敬愛を示した曲”Raf”がリリースされたのもその理由でしょう。
他にも、アーカイブコレクターでありアメリカで衣装提供しているデビッド・カサヴァントをはじめ、次の記事では各人紹介していきたいと思います。