”#ラフ・シモンズ カルバンクライン退任”
カルバン クライン(CALVIN KLEIN)のチーフクリエイティブオフィサーに2016年8月に就任したラフ・シモンズ(Raf Simons) がわずか2年4ヵ月という短期間でカルバンクラインを去り全ての役職を退任すると運営会社のPVH Corp.が昨年2018年12月21日に発表した。
過去にジルサンダー( Jil Sander、2005年)とジョン・ガリアーノの後任としてクリスチャン・ディオール(Christian Dior、2012年)を復活 させた実績があるラフ・シモンズ。 カルバンクラインを2年弱というスピード退任に至った、ラフ・シモンズ。今回の彼のパフォーマンスを見てしっくりこなかった方も多いと思います。部外者ながら 天才デザイナーでもあるラフ・シモンズがカルバンクラインでは上手く行かなかったこのケーススタディを振り返りたいと思います。
カルバンクラインとの温度差
グループCEO エマニュエル VS ラフ・シモンズ
カルバンクラインはトミーヒルフィガーや競泳用水着で有名なSPEEDO(スピード)社を傘下に持つ PVHコープ(PVH CORP)のエマニュエル・キリコ(Emanuel Chirico)会長兼最高経営責任者(CEO) がトップに君臨するグループの1つなんですが。このエマニュエル・キリコ氏名前はエマニュエルにキリコと可愛らしいですが。金融・財務など完全にビジネスマンよりでファッションについては素人でPVHコープで働く前はErnst&Young LLCで働いており2017年の役員報酬は約1700万ドル(約19億円)です。1700万円ではないですよwUSD(ドル)です。日本の中小企業の売り上げ規模を報酬でもらっています。
まあ報酬はパフォーマンスをあげられていれば全然OKなんですが。彼は数字を主に見てジャッジするのでしょう。ビジネスなんで当然といえば当然ですが。ラフ・シモンズとしては腰を据えてカルバンクライを変えたかったという思いもあったのでしょうが。当初からラフとは上手く言っていなかったようです。結果・売上を求めるエマニュエルとアーティスティックに新しいカルバンクライを追求するラフ・シモンズと言う具合でエマニュエルVSラフ・シモンズという構図が出来上がっていたんだと思います。
”顧客層”と”経営層の考え方”の違い
ラフ・シモンズがカルバンクラインのデザイナー就任時モーリス・ゴールドファーブ(Morris Goldfarb)G-IIIアパレルグループ会長兼最高経営責任者(CEO)はインタビューにこのようにコメントしている。
「メイシーズ(MACY’S)やディラーズ(DILLARD’S)などの百貨店に入っている”カルバン・クライン”で買い物をする人に、『ラフ・シモンズを知っていますか?』と質問しても誰も知らないだろう。」
”Today, if you took a poll on the Calvin Klein customer, who’s Macy’s and Dillard’s, and ask them who Raf Simons is, I think you get a zero. I think you probably get less than 10 percent of the fashion population that knows who he is,”
via wwd.com
そもそもこのコメントはラフ・シモンズに対しても失礼だが。それ以上にこの時点で顧客層とのミスマッチに気付いていないのも非常に痛々しいのですが。この後のコメントが更に痛々しい。。 カルバン・クラインが、ラフ・シモンズ不在でコレクション、イメージ戦略などが無い状態で今後も事業を発展させられるのかという質問に、 モーリス・ゴールドファーブ 会長兼CEOは、
「できると確信している。今まで通りマーケティングに多額の予算を割くだろう。カルバンクラインにとっては、ラフ・シモンズの存在よりもそうしたマーケティングの影響のほうが大きい」
via wwd.com
ラフ・シモンズのインタビューから見えたもの
カルバンクライを退任してしまいましたが。昨年2018年10月のニューヨークタイムズ紙のインタビューでは新生カルバンクライン誕生のためのBIGアイデアを語っており、既に彼の中でのデザインに対するイメージが出来ていたのかもしれません。しかしそれはもうカルバンクラインで見ることはかないませんが。また新しいカタチでそれを見れるのを楽しみにしたいと思います。
芸術への愛とアンディ・ウォーホル
ラフ・シモンズはベルギーのヘンクという田舎町で育ち美術や芸術的な背景はあまりなかったと過去にいくつかのインタビューで答えていますが。彼が10代のころTシャツ・スケートボード。またテレビ番組で見かけた現代美術のキュレーターでもあるヤン・フート(Jan Hoet )によりアンディーウォーホールに魅了されていたことを思い出します。この時のインタビューについてニューヨークタイムズ紙のインタビューを引用しながらご紹介したいと思います。
わたしはアンディーウォーホールの disasterシリーズや電気椅子の作品が好きです。
“[I like Warhol’s] disaster work — any car crash or disaster or electric chair. I just think they are so … it’s difficult to explain. When you say you adore that body of work, it seems like you are someone who adores violence and horror. With Warhol, I am more attracted to the work that doesn’t deal with famous people, because my world is already dealing so much with famous people.”
via nytimes.com
ファッション以外の世界へ
「やりたいことはファッションではないと考え続けています。 映画を作る、アートを作る – 何かを作る。。。ファッションでは、デザイナーの在り方が大きく変わりました。」
“I keep thinking of things I would like to do that are not fashion. Making movies, making art — the practice of making something. In fashion, the actual practice of being a designer has changed so much.”
via nytimes.com
デザインについて
「私は頭の中でいつも、これがあなたのやり方ですか?と問いかけています。 ある意味では、私はファッションデザイナーだとは思ってません。今はそれほど気にしませんが。 人々が私にそう呼んだとき、私はかつてとても怒っていました。」
“It’s always on my mind, is this what you do? In a way I don’t think I’m a fashion designer. I used to be so upset when people called me that. Now it doesn’t matter so much.”
via nytimes.com
ラフ・シモンズ×アンディ・ウォーホル
ラフシモンズのインタビューから見えてきたのは商業的なカルバンクラインにアンディ・ウォーホルというアート・美術をインストールすることで新しいブランディングを作っていこうと言う気概やビジョンが見えてきました。しかしあえなく2年弱で売り上げと言う数値目標をクリアに出来ず退任となりました。
しかし退任までにリリースされたラフシモンズがイメージしていた新しいカルバンクラインについてコレクションの画像をもとに振り返りたいと思います。
「緑色の惨事10回」 ラフ・シモンズ×アンディ・ウォーホル
ラフ・シモンズ×アンディ・ウォーホルの2018年春夏コレクションのアイテムで アンディの名作『緑色の惨事10回 』をプリントしたタンクトップと黒のボトムスです。2枚目は日本人モデルのKOHEI(コウヘイ)さんですね。ここでも活躍されているとはもはやアジアでコレクション登場は韓国人モデル ス・ミン Xu Meenぐらいあるのではないでしょうか。