まだまだ暑い残暑が残る9月のはじまりですが。NIKEとOFF White。そしてセリーナウィリアムズのトリプルコラボによるAIR MAX97 “QUEEN”がNYC(ニューヨークシティ)のみと極々限定でリリースされました。
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既にアメリカ全土ではスニーカーヘッズのみならず、お洒落にトレンドに敏感なユーザーなどの間ではこのシューズの話題で持ち切りになりましたが。毎回ではありますが。今回のセリーナウィリアムズ、そしてNIKE(ナイキ)・OFF White(オフホワイト)のマーケティングの組み立て方は神っています。
NIKE(ナイキ)は神がかったマーケティング企業
これはNIKEがいかにマーケティングに対して凄いパフォーマンスを発揮しているかを知らしめる有名な話しですが。AIR MAXを代表するあの圧縮ガスのNIKE(ナイキ)エアで運動機能が高まるという科学的根拠は薄く、実は最近の調査ではむしろマイナスという話もあるようです。つまり我々にあのエアが効果的であると思わせる宣伝、ブランディングに成功しているってことなんです。
▲ Air Maxのイメージムービーです。とらえ方は人それぞれだと思いますが。直感的に感じるのは”NIKE(ナイキ)エア”の素晴らしいクッション性、機能性というものを潜在的なイメージとして植え付けられるような動画であり1分弱でそれをイメージさせるのが出来るのもNIKE(ナイキ)のマーケティング力だからこそ。
▲ 藤原ヒロシさんが監修されている”AIR MAX”のイメージムービーです。ついつい気になって最後まで見ちゃいます。恐らく動画には一つ一つのテーマがあるのでしょうが。このムービーからは”未来”と”先進性”を感じます。常にトレンドを追い続けユーザーを飽きさせないNIKE(ナイキ)が垣間見える動画です。
これに対してNIKE(ナイキ)の創業者であり、現在もご健在のフィルナイト氏は1992年の時点でNIKEはチャンピオンブランドビルダーでありマーケティング企業であると創業者自身が明言しておられます。
これだけ世界中の相当な数のユーザーに対して企業が理想とするイメージを植え付けるというか認知させ潜在的なユーザーの心理、もちろん購買心理も含め揺さぶることが出来ている企業は世界中を見てもないでしょう。いちユーザーとしてだけではなく、ビジネスの観点からも動向に目が離せません。
参照:High-Performance Marketing: An Interview with Nike’s Phil Knight
セレーナウィリアムズ全仏OPウエア禁止!?
セリーナのウエアと言えば以前よりある意味でプレイと同じように他を圧倒する奇抜でインパクトがあるため注目されておりましたが。このたび全仏オープンより最近定着しつつあったセレナの”キャットスーツ”が度を越えていると見なされ来年からは禁止する方向で進んでいるようです。
You can take the superhero out of her costume, but you can never take away her superpowers. AIR MAX97 “QUEEN” AIR MAX97 “QUEEN”
— Nike (@Nike) AIR MAX97 “QUEEN”
セリーナのこの今までに見たことが無いようなテニスウエアは、ハリウッド(Hollywood)の大ヒット映画『ブラックパンサー(Black Panther)』に影響を受けたものでセレナ自身もこのスーツを”ブラックパンサー”と呼んでいるらしく正式名称は”キャットスーツ”では無いようです。
そして後述しますが、このスーツを着ている意味・目的もあるそうでこのスーツを着るまでのセレナのストーリーが背景にありテニスだけではなくユーザー心理が盛り上がる要素が随所に散らばっておりもしこれがNIKE(ナイキ)さんのブランディング戦略だとしたら…と思うと凄いというか恐ろしいという畏怖の念さえ覚えてしまうほどです。
マイケルジョーダンがペナルティを貰ったエアジョーダン1と似てる…
今回のセリーナウィリアムズの”ブラックパンサー・キャットスーツ事件”は”マイケルジョーダンのNBA罰金事件”と非常に類似したケースのように見えます。むしろ穿った見方をすれば、この事件の発端とそれにより返ってくるリターンである売上、利益、ユーザーのエンゲージメントなどなどを一度経験済みのNIKE(ナイキ)のマーケティング戦略のようにも見えてくる今回の騒動。。気になります。
Air Jordan/エアジョーダン1が好きな方ならこの逸話をご存知だと思いますが。エアジョーダンシリーズの始まりは1984年、NIKE(ナイキ)がはじめてマイケルジョーダンが履いたエアジョーダン1が伝説のはじまりなんですが。
実はこのエアジョーダン1、NBAからカラーが派手すぎる「ユニフォームの色にそぐわない(白が少ない)」という何とも言えない理由でルール違反・着用禁止を命じられます。
via image AIR MAX97 “QUEEN”
▲NBAがNIKEに送った違反通知には、「1984年10月18日頃に、ジョーダンが赤と黒のNikeバッシュを履くのを禁止にした」と記載。
しかしNIKEとマイケルジョーダンはこのルールを敢えて違反してAJ1を履きプレイをし続けました。これに対してNIKEはマイケルジョーダンの代わりに1試合につき5000ドル(日本円で約50万円)の罰金を請求され支払い続けました。もちろん、この罰金の額を厭わない額の売上と利益がこのマーケティングの果実として得られることを想定してのことでしょうけど。売上だけではなくNIKE、エアジョーダンブランドにとって飛躍的なブランディングになるわけです。
マイケルジョーダンとNIKEの契約
1984年からはじまったマイケルジョーダンとNIKE(ナイキ)、エアジョーダンブランドの伝説はマイケルジョーダンがNIKEと日本円で年間約5000万円の5年契約という当時にしては破格のオファーを獲得したところからスタートします。
このオファーの契約条件に3年以内に「新人王獲得」「シーズン平均20得点以上」「オールスター出場」のいずれかを達成するという非常に難易度が高く一流選手でなければクリアできないレベルの要求をされます。
しかし当時のNIKE(ナイキ)のマーケティング予算の大半をこのマイケルジョーダンとの契約に割いた背水の陣から、恐らく事前にマーケティング戦略とストーリー展開は事業計画として組まれており創業者であるフィルナイト氏もゴーを出したのでしょう。
伝説のマイケルジョーダン・エアジョーダン1のCM
この一見偶然にも見えるNBAの違反宣告に罰金も、そしてこれにより観衆、メディアの注目が一気にNIKE(ナイキ)に集まることも事前に予測されていたのかもしれません。そう思わせる伝説となっているマイケルジョーダンのコマーシャルがこちらです。
CM自体は非常にシンプルですが。”banned!”のコピーからスタートしマイケルジョーダンの挑戦的な表情に目線。そしてエアジョーダン1と対照的なホワイトのソックス。
「NBAはエア・ジョーダンを禁止したが、君たちが履くことを禁止には出来ない」
終盤にこのメッセージが入るんですが。このCMを見たマイケルジョーダンファンの心を震わせ更に応援したい、エアジョーダン1を購入しなければとユーザー心理、購買心理を鷲掴みにした事は間違いないと思います。
マイケルジョーダンのNBA禁止事件の結果
シーズン中に20得点以上を入れるというのはNBAの中でも一握りの選手しか達成できないレベルの条件で、勿論達成出来れば一流のスコアラーの仲間入りと言える目安となる得点数なんですが…..。スーパースターはやっぱり次元が違いすぎます。なんとマイケルジョーダンはこの全ての条件を何と、、なんとルーキーシーズンに達成!!!
エアジョーダン1を履き続けたことでNBAからはシューズの禁止と罰金を宣告を受けますが。見事に圧倒的な注目度とカリスマ性を携えてスター選手の仲間入りを果たします。ジョーダンの快進撃はこれだけに留まりません。契約しているNIKEのシューズの売上は販売後3ヶ月で日本円にして約70億円を売り上げることになります。
NBA禁止事件、マイケルジョーダンが契約全条件をルーキーシーズンに達成したこと等の必要条件が全て揃ったことでエアジョーダン1は爆発的な認知とブランディングを成功させます。もちろんそれに対して必要な”Banned!”などの伝説的なCM、メッセージも手伝ってですが。今回のセリーナウィリアムズの”全仏オープンウエア禁止事件”も非常に類似した展開を見せており今後の展開がユーザーとしてもビジネスの観点からも気になって仕方がありません。
セリーナウィリアムズが”キャットスーツ”を着るワケ
via image fashionbombdaily
一般的にルール違反というものはテレビや新聞などのメディア以上にインターネット、SNSが発達した現在ではバッシングを浴びやすく透明性がないものは叩かれ排除される力とスピードが昔以上に厳しいものになってきてます。
しかしこれが致し方ない事情、例えばセリーナウィリアムズのように健康問題などから泣く泣くルール違反し”キャットスーツ”を着用した場合などは逆にそれを違反とジャッジした側に対してその判断はどうなのか??というファンの声が増え。
これによりただでさえ注目というか気になってしまうテニスウエアである”ブラックパンサー・キャットスーツ”ですが。これを違反しているセリーナウィリアムズを責めるというよりも健康問題があるからそれを禁止にするのはどうなのか??などセレナを擁護する声が増えてくるわけです。ファンならば尚更ですね。
それに対して他のユーザーも同調し結果としてインターネットのみならずメディアも注目することになるわけです。しかも世論を味方に付けた上での言動だと逆に違反を指摘した側が非難の声を浴びせられます。
セリーナウィリアムズの健康問題とは!?
▲セリーナウィリアムズはテニスの女王・スタープレイヤーとしてだけではなく、世の女性の味方として既に確固たるポジションを獲得しているのは過去の健康問題やトラブルも含めてそれらが世の女性の共感を多数得ているからですね。
セリーナはこれまで沢山の強敵、ライバルと呼ばれるテニスプレイヤーとコート上で戦ったように多くの健康問題とも戦ってきておりセレナは2010年に「ウィンブルドン」を制した直後、レストランをでるときに割れたガラスで両足に切り傷を負って右足に2度の手術を受けてます。
それからも肺塞栓を発症し自分で抗凝血剤を注射しなければならなくなったり、その注射の影響で腹部の皮下に血が溜まりまたも病院で治療を受けることになったりと大変な健康問題を抱えていました。2011年には左の肺に血栓ができて休養しており、昨年2017年には長女を出産した際には命の危機に瀕したほど血栓症に苦しめられました。
セリーナウィリアムズが“ワカンダ風キャットスーツ”と呼ぶテニスウエアを着用するのは、この“キャットスーツ”には全身に圧力をかけることで血液の循環をよくし、血栓の発生を防ぐ効果があるためという理由があるわけです。
『全米オープン』セリーナウィリアムズ”キャットスーツ”の次は”バレエ衣装チュチュ”??
セリーナウィリアムズは全仏オープンではフランステニス連盟のベルナール・ジウディセリ(Bernard Giudicelli)会長から『度を越している‼』と言われ”キャットスーツ”の着用禁止を宣告されるも、冷静に…会長は良い人だからきちんと話し合い解決できるだろうと言いながらも。。。
その後の全米オープンでは、OFF White(オフホワイト)のヴァージルアブローがデザインしたバレエ衣装であるチュチュを着て参戦(笑)本当に鋼のメンタルというか、強い女性ですね。逆にお気の毒なことにマナーや歴史などを重んじたいとドレスコードを命じたベルナール会長は世の女性、セレナファンから猛烈なバッシングとブーイングを浴びている様相です。
The policing of women’s bodies must end. The “respect” that’s needed is for the exceptional talent @serenawilliams brings to the game. Criticizing what she wears to work is where the true disrespect lies. https://t.co/ioyP9VTCxM
— Billie Jean King (@BillieJeanKing) August 25, 2018
フランス連盟が”キャットスーツ”を禁止にすべきであると判断したのは体のラインが露わになることが理由だと言われているんですが。それに対して元テニス選手のビリー・ジーン・キングのTwitter投稿なんですが。
ビリーは映画『バトル・オブ・セクシーズ』のように女性差別と闘ってきたアスリートです。
「女性の体に対する規制は終わらせるべき。セリーナが試合で見せた類稀なる才能にこそ敬意を払う必要がある。彼女が試合で何を着るのかを批判するのは本物の軽蔑だ」
とツイートしており1万近い”いいね!”と3000を超えるリツーイトをゲットしており、普段の20倍以上のエンゲージメントを見るにどれだけの人がこれに共感しているかが伺えます。
これを分かってのことか、セレナは自身のInstagramなどのSNSでは世の女性の味方であることを強調する発言を常に発信しておりNIKEもまたこれを後押しするようなSNSへのポストを行っており。壮大な世の女性を味方につけるブランディング戦略を感じます。
Twirling into Friday!! ✨ #USOpen @usopen pic.twitter.com/ypVIek40uc
— Serena Williams (@serenawilliams) August 30, 2018
セリーナウィリアムズが世の女性の共感を得る理由
Not all superheroes wear capes. Ours certainly doesn’t.
Serena Williams on @TennisChannel:
“All the moms out there that had a tough pregnancy and have to come back and try to be fierce, in a middle of everything. That’s what this represents. You can’t beat a cat suit, right?” pic.twitter.com/VzU1MdBLVe
— WTA Insider (@WTA_insider) May 29, 2018
WTA(女子テニス協会)の公式ツイッター:
すべてのスーパーヒーローがマントを羽織っているとは限らない。私たちのヒーローもまた然り。セリーナ・ウィリアムズは、テニス・チャンネルでこう語った。
「世界中のすべての母親たちが、つらい出産を経たあとに職場復帰する必要があり、せわしない日々の中で激しく生きていかなくてはいけない。これが表しているのはそういったことなの。キャットスーツは簡単には打ち負かせないわよ」
このメッセージを見た世の女性は、自分の状況に置き換えてセレナのメッセージに勇気をもらい元気づけられた事でしょう。そしてそれは勇気や元気を貰うだけではなく、感動・興奮になりそして更に言うと共感・応援・支援にまで変わっていきます。
フランステニス連盟のドレスコードを命じたベルナール会長がバッシングを受けていることがそれを如実に表しています。歴史やマナーは非常に大事だと思う考えは決して間違ってはいませんので少々お気の毒ですが。インターネット、SNSが発達した今の時代では世論や大衆を味方につけた方が勝ちであり正義だとも言えます。
これは長女を出産後のセレナのInstagram投稿です。こんな素晴らしいメッセージを書けるセレナはスポーツだけではなくて文才もあり過ぎですね。こんなInstagramの投稿をみた女性は共感の嵐で”いいね!”を押すだけではなくリポストやブログ、Facebookなど拡散せざるには得ないでしょう。
先週は、かなり辛く個人的な問題に直面し弱腰になってしまった。自分自身がダメな母親だと感じてしまったの。出産後の不安定な精神状態は、うまく対処できない場合、3年間続くという記事を読んだ。私はコミュニケーションを取ることが大好きだから母や姉や友達に相談したの、私の感情はいたって普通だということが分かった。
娘に対して完ぺきな母親ではないと感じることは、全くおかしなことではないってね。誰もが通る道なの。私は必死にトレーニングを積んで、最高のアスリートになる努力をしている。でも同時に、自分が納得できるほど多くの時間を、娘と一緒に過ごしてあげられない。母親であるあなたたちの大多数が、同じことで悩んでいるはず。
専業主婦でも、働く母親でも、子どもとうまくバランスを取ることがとても大切。あなたたち母親は、真の勇者よ。私が言えることは、つらい日や週があっても大丈夫だということ。私も同じ。どんなときでも、明日は必ず来る。
セリーナウィリアムズのSNSのいいね!から見える共感の力
セレーナウィリアムズのテニスウエア騒動はテニスウエアの問題というところから、女性問題という大きなところにまで発展し話題というよりも大きな議論にまで発展しており。結果としてセレナのファンの団結を強くし、世の女性を更に味方にしたと言えます。
結果として”いいね!”の数が100万件を超えるような恐ろしい事態になったのだと思います。しかも圧倒的な短期間でこれだけの反応を集めれるようになったわけです。
Instagramの投稿ですが。この記事を書いている現時点で83万の”いいね!”が付いています。コメントは4500件を超えております。。。”いいね!”が4000件でも十分すぎるほど凄いのですが。コート上だけではなくSNS上でもセレナのパワーは圧倒的です。。
You can take the superhero out of her costume, but you can never take away her superpowers. #justdoit pic.twitter.com/dDB6D9nzaD
— Nike (@Nike) August 25, 2018
こちらはTwitterです。”いいね!”が27万のリツイートが12万です。もう世論を左右させる影響力がある1メディアと呼べる驚異のエンゲージメントです。
ヴァージルアブローのInstagramでは彼自身がデザインしたチュチュがポストされたんですが。これも22万ほどの”いいね!”と2300コメントを獲得しており普段のヴァージルアブローのポストに対して単純に10~30倍のエンゲージメントを得ておりどれだけセリーナウィリアムズの影響力が半端ないかが見えてきます。