”HISTORY OF VAPORMAX”
エア・ヴェイパーマックス誕生の歴史は、1978年のエアテイルウインドにまで遡ります。そしてエアテイルウインドを含めNIKE(ナイキ)の歴史と人気の代表的なモデルのすべては名前の通り”エア・AIR”ではじまっていると言っても過言ではありません。
伝説のエア・ジョーダン(AIR JORDAN)、社会現象にまでなったエア・マックス(AIR MAX)、海外セレブを魅了するエア・フォース1(AIR FORCE)。これらすべてのナイキの代表的な稼ぎ頭のモデルには全てエア・AIRのキーワードが頭にあります。
そしてエアの進化は同時にナイキに新しいプロダクトと技術の創造をもたらしました。
ナイキエア進化系のヴェイパーマックス
エア・ヴェイパーマックスは全てにおいて次世代を見据えたデザイン・機能性・耐久性。そしてマーケティングも含めリリースまで7年もの歳月を費やし沢山の開発者やデザイナー、マーケッターの頭脳から絞り出された最適値によって生み出された言わば”ナイキエア”の最新形態なんです。
そんなヴェイパーマックスに搭載されたナイキエアも遡れば約半世紀近い歴史とナレッジがあります。そしてヴェイパーマックスの歴史を知る上では”ナイキエア”の歴史を理解し知っておく必要があります。
元NASAエンジニアとナイキエア
ナイキエアを語る上で欠かせない『ナイキの父』とも言われる元NASAエンジニアであるM.フランク・ルディ(Frank Rudy)氏は今日のナイキの発展においてなくてはならない存在でした。彼は既に2009年に84歳で亡くなられていますが。
「ゴムのブロー成形」と言われるアポロ計画で宇宙飛行士のヘルメット製造で使われた技法を応用し生み出された”不活性ガスをベースにしたクッションシステム ”こそが今日のナイキエアの原点であり全てのスニーカーのベースとなっており彼が生み出したアイデアと技術は今なおナイキのエアソールに活かされています。
ナイキエア豆知識:ナイキエアの原点はスキーブーツ
ナイキエアについての起源
殆どの人はナイキエアについての起源を 知りません。ナイキエアは、丁度今年で50年、半世紀前の1969年ナイキの前身のBlue Ribbon Sports 【ブルーリボンスポーツ】(BRS)社時代のころフランク・ルディ氏がよりクッション性の高い高品質なスキーブーツを開発しようと考えたところからすべては始まりました。
そして、今日のようなナイキのスーパーマーケティングのコンセプトやキャッチコピーを実現しそれらのキーワードやアイデアを凌駕するほどのユーザー満足を提供できる製品・プロダクトの基礎である”ナイキエア”を作ったのです。
ナイキがアディダス、プーマなどに比べ後発組のシューズブランドでありながら現在のようなナンバー1のブランドになり得たのはマーケティングやマイケル・ジョーダンなどのスーパースターやTravis Scott (トラヴィス・スコット)などの海外セレブの影響力も大きいのですが。
やはり20世紀には無かった靴・スニーカーに”エアAIR”を搭載すると言うありそうで無かった価値を実装し高いクオリティと満足度、そしてなによりも感動を提供できたからでしょう。そしてなによりナイキが常に我々スニーカーヘッズを魅了させるコマーシャルや時代やトレンドに合わせたマーケティング手法で驚かせてくれるからです。
マイケル・ジョーダンが一言もしゃべりませんが。結果として伝説のジョーダンシリーズ、ジョーダン1の爆発的な人気とバイラル・口コミを生み出すキッカケにもなりました。
NIKE(ナイキ)が取得した最初の特許
M.フランク・ルディ(Frank Rudy)氏 は1979年にこのナイキエアソールの原点ともいうべきアイデアを特許として出願し取得されています。そんなフランクが取得した特許は優に250以上の発明特許を保有していました。
この動画は亡くなった年に撮影されたものですが。とても亡くなる前ということを感じさせないほど彼の発言からは発明欲というかエネルギーを感じます。そして彼のアイデア、知財が生み出した収益の大きさも彼の自宅のサイズとインタビュー中にバックに映る装飾から見て取れます。
1980年代にはすでにエア・ヴェイパーマックスのアイデアがあった??
エア・ヴェイパーマックスの特徴的なエア・ソールの原型とも言えるような六角形のエアが搭載されたエア・マライアは1,981年に新しいエアのプロトタイプとして開発されていましたが。完成せず陽の目をみることなくお蔵入りとなりスニーカー市場で販売されることはありませんでした。
しかしこのエアの形状をみる限り、現在のエア・ヴェイパーマックスのヒントはすでにこの時にできていたのかも知れません。
エア・マライアのプロトタイプは上の写真のネイビーとホワイトの配色で発売され、1980年のモスクワマラソントライアルで公式デビューを果たしました。
エア・ヴェイパーマックスのコンセプト
エア・ヴェイパーマックスのコンセプト「空気(Air)の上を走る」はこれからご紹介するナイキの2名の若き天才デザイナーのうちの一人でNIKEで唯一“エキスパート”の称号を与えられたフットウェアデザイナー 。しかも日本人(大阪)のデザイナーさんが考えたんです。
エア・ヴェイパーマックスのプロトタイプ
エア・ヴェイパーマックスはエアマックス 2017の次世代モデルとして4オンス軽量化され39,000以上の部品で構成されており。今までのスニーカーではありえなかったソールとアッパーだけで構成された非常にシンプルだけど実現困難なデザインでした。
ミッドソールや接着剤など余計なものは一切なく 「空気(Air)の上を走る」というコンセプトを体現し実装したNIKE(ナイキ)にとっても今までのスニーカー業界においても初めての試みだったのです。
NikeのUnderfoot Cushioning Innovation担当バイスプレジデントのキャシー・ゴメス(Kathy Gomez)氏のインタビューによると、
『VaporMaxソールを正しく仕上げるために15回以上の試作が必要でした。耐久性と安定性、そしてもちろんクッション性と感覚のバランスをとる必要がありました。
via highsnobiety.com
そしてこれらのことをすべて結びつけ組み合わせ、厚さと形状の完璧なバランスを見つけ機能するプロダクト、、プラットフォームを作成する方法を見つけたのです。』
“To create this, we had to balance durability with stability, and of course cushioning and sensation,” she says. “It was really figuring out how to marry all those things together and find the perfect balance of wall thicknesses and geometry to create the platform that worked.”
コロラド州にてLunar Racer 1シルエットのランニングアッパーに実験用ソールにて幾度となくテストされナイキほどの優れた人材と資金を持つ大企業でもこの1つのモデルを完成とリリースさせるまでに7年の歳月が費やされました。
二人の若き次世代の天才デザイナー
南トーマス哲也(Tetsuya Thomas Minami)
南哲也さんは、あのロナウジーニョやルーニーが愛用するスパイクを中心としたフットボール向けのシューズデザインからキャリアをスタートし現在はNIKE唯一のエキスパートデザイナーとして大活躍されています!
そして先にご紹介させて頂いた
エア・ヴェイパーマックスのコンセプト「空気(Air)の上を走る」を考え実際のデザインとして生み出した生みの親なのです。
ザカリー・エルダー(zachary elder)
ザカリー・エルダー氏は、太陽光発電システムやプラスチック汚染物質ろ過 システムなど社会的な問題を解決するいくつかのスタートアップでの経験を得たのちにナイキにjoinしヴェイパーマックスの次世代ナイキエアを開発しました。
彼は南哲也氏が考えたコンセプトの 「空気(Air)の上を走る」 を実現させるためにエアマックスよりもエアの量を減らしよりエアの機能性を効率化させ最適化させることを念頭に開発を進めました。
そしてエルダー氏はこのように説明しています。
「足を地面に置くと、それぞれのラグがAirユニットに押し付けられ、圧力がかかる。足を地面から離すと、圧力が開放され、あの弾むような感覚が生まれる」
これこそがコンセプトを実現した証なのです。
ヴェイパーマックスの完成にはこの二人のデザイナーの存在がなくては実現しなかったでしょう。コンセプト、デザイン、次世代のナイキエアと理想と現実をうまくバランスさせたようなこの二人の天才デザイナーが生み出したヴェイパーマックスのこれからのさらなる進化に目が離せません。
エアヴェイパーマックスがもたらしたもの
エアヴェイパーマックスの歴史を今回開発からリリースされるまでの要所、重要なお話しなどを掻い摘んでご紹介させて頂きました。エアヴェイパーマックスのリリースはナイキにとっては21世紀の新世代への交代ともいうべき重要なポイントが見え隠れしています。
コストと材料の削減と更なる高収益化
ヴェイパーマックスはナイキにとってもスニーカー業界にとっても今までになかったアッパーとソールだけという実にシンプルで無駄なコストや材料を省いた有り得ない凄い構造となっている。
このアイデアを考えた人は恐らく沢山いると思いますが。実際に実現し実用に耐えうるどころか満足度をデザイン・機能性・耐久性の面からも提供できるというのは全く持って有り得ませんでした。
そしてこの構造と製造方法の実現により接着剤、ミッドソールなどなど今まで当たり前に必要としていた材料、そして工程が一気に省かれることになったのです。
NikeのUnderfoot Cushioning Innovation担当バイスプレジデントのキャシー・ゴメス(Kathy Gomez)氏の インタビューを見れば今後のナイキがこの製造方法をさらに拡張させていくことは間違いないでしょう。何故ならばコスト・製造時間などなどありとあらゆる無駄を省き最適化出来るからです。
何よりナイキにとって求められる時代の1歩先を行くデザイン・機能性・耐久性をこの技術によって実現出来るからなのです。
「靴の作り方を考え直す必要があり、プロセス全体から層を取り除きました。最大の画期的な成果の1つは、Nikeがエアバッグに直接固定するアウトソールを作成できたことです。
via highsnobiety.com
VaporMaxソールはまったく新しい方法で作られています。ソール全体がTPU製で、アウトソールはグレードが異なります。その間に接着剤はなく、エンジニアリングチームは接着剤、フォーム、ゴムの余分な層を避けることができました。 」
若き天才デザイナー
ナイキのデザイナーと言えば伝説のティンカーハット・フィールド 氏ですが。彼がもたらした功績と実績。そしてナイキにとっての収益の規模と割合はとてつもない途方に暮れるようなサイズであるわけですが。彼も現在は66歳。ナイキもそろそろ世代交代と代謝、進化が必要となるタイミングでもあるわけです。
そんな中でエアマックスの次の世代を担うヴェイパーマックスという稼ぎ頭であり新しい領域を作りだした南哲也氏、ザカリー・エルダー氏などの若き天才デザイナーが先頭を切って成功したということはナイキにとってかなり大きな資産になることは間違いありません。
我々スニーカーヘッズへのワクワク感の提供
既に物質的にはモノがあふれ、尚且つ情報もものすごいスピードで大量に行き交う中で満たされていないはずが満たされ過ぎているような感覚に陥り少しのことでは驚きや感動をしなくなった我々現代人にとって”何かを買うことでのワクワク感”が無くなったことが消費減退の1つの要因であることは間違いありません。
しかしこのヴェイパーマックスは見た目からしてわれわれスニーカーヘッズにとって『気になる!!買いたい!!』と思わせてくれる1足であることは間違いありません。
2016年10月5日:コムデギャルソン×ヴェイパーマックス
今のヴェイパーマックスモックと非常に似ているけれどコムデギャルソンらしさともいえるシンプルで無駄を無くしたというよりもシンプルで飾り気のないなかでいかに個性を光らせるかを具現化させたようなビジュアルデザインが非常に惹かれるコラボスニーカーです。
2017年9月1日:オフホワイト×ヴェイパーマックス
ヴァージルアブロー率いるオフホワイトとナイキのコラボシリーズ”ザ・テン”で最初にリリースされたホワイトカラーのエア・ヴェイパーマックスはコムデギャルソン×ヴェイパーマックスの余熱と期待の高まりから圧倒的な話題と人気を集めリセール市場には10倍近い値が付くこともざらと言うぐらいの人気を誇りました。
2017年11月2日 :エア・ヴェイパーマックスフライニットモック
2018年1月25日:エア・ヴェイパーマックスプラス
”VAPORMAX PLUS”
ヴェイパーマックスがリリースされ1年もたたない2018年1月25日にエアマックスプラスとヴェイパーマックスのハイブリッドスニーカーとして誕生したのが”ヴェイパーマックスプラス”です!!
ヴェイパーマックスプラスは20年以上も長い間人気を博しているエアマックスプラスのアッパーデザインを融合させられデザインされています。こちらの記事にヴェイパーマックスプラスのレビュー動画やサイズ感、デザインについて詳しい情報をご紹介しております。
2018年3月9日:エア・ヴェイパーマックス 97
エア・ヴェイパーマックス97は日本の新幹線からインスピレーションを受けたというデザイナーのクリスチャン・トレッサーがデザインしたナイキ・スニーカー業界、史上初のフルレングスのビジブルエアを搭載したエアマックス97とヴェイパーマックスのハイブリッドスニーカーとしてリリースされた1足です。
ちなみにヴェイパーマックス97のアッパーデザインは水滴が水面に落ちた時の放射状の波動をイメージしたとインタビューでデザイナーのクリスチャン・トレッサーが語っている。
更に詳しい情報はエアマックス97とエア・ヴェイパーマックス97の歴史についてご紹介した記事をぜひ一読ください。