沢山の革靴のレザー素材の種類と手入れ方法がある中、手に取りやすいのがやっぱりスムースレザー。ベーシックで基本のシューズであり、奥の深いレザー素材です。以前の記事では語り尽くせなかったスムースレザーシューズの手入れ方法と、そのおもしろさとおすすめする方法をご紹介します。
スムースレザーとは?
スムースレザーのsmoothはなめらかという意味です。表面がなめらかなレザー素材はスムースレザーと呼ばれます。表面が起毛しているスエードや、型押しされているアニマルレザーなどの凹凸感のあるレザーも含みません。表面がなめらかなレザーは スムースレザー と定義されますが、種類もさまざまで沢山の種類があります。その中で更に、オイルドレザーやアニリンなどの仕上げ方で細かく革靴の種類が分類されるのです。
銀付きレザーかガラスレザーの2種類
スムースレザー シューズは主に銀付きレザーかガラスレザーかに分類されます。それぞれ一長一短ではありますが、どのタイプの革靴でもしっかりと ブラッシング と手入れをしてあげる事が大切です。
スムースレザー
スムースレザー は、本来の革の仕立て方が2種類に分かれています。まずは銀付きのレザーの銀面(外側)をそのまま用いて、革の持つ表情や風合いを生かしたレザー。こちらは銀面をそのまま使用しているので、傷やシワの入った原料の革は使用出来ないので、選ばれた素材の革靴・ レザーシューズ となります。
銀付きのレザーはアニリン仕上げやボックスカーフ(生後半年以内の仔牛であるカーフをクローム鞣しを経て仕上げられた品質の良い最高級レザー)などが存在します。
この銀付きレザーで作られた レザーシューズ は、必ずしっかりと手入れやメンテナンスをする事が必須となります。生きたレザー素材で経年変化(エイジング)を楽しみ、自分好みにカスタムする事も可能です。耐水性と耐久性は弱いので、手入れを怠るとトラブルが比較的早い段階で出てしまうという面も存在します。
次はガラスレザー・ガラス加工・ガラス貼り革と言われるレザー素材。鞣した後に、銀面を磨いて処理をしたもの(パッフィング)でお手入れなしでも、雨の日でも安心な素材になります。ショップなどでは、手入れをしなくても光沢感を維持出来ると言われています。
反面、手入れをしても革に油分が入らない、ひび割れる。といったマイナス面も存在します。ガラスレザーは表面に樹脂が塗られているので汚れや雨に強いです。かと言って、全く手入れが必要ない訳ではありません。 ブラッシング や防水スプレーなど基本の手入れは最低限しっかりと行いましょう。
そして、ガラスレザーは安価に手に入れる事が出来るのも特徴です。ガラスレザー処理は、傷が多くて銀付きのシューズに出来ないような質の革でも、加工を施して表面を綺麗に整える事が可能なのです。
革質が銀付きレザーと異なるという理由ではありますが、安価に手軽にレザーシューズを楽しめるのも嬉しい事です。特にコードバンなどの高級素材のガラスレザーだと、最初の挑戦もしやすいです。量販店や市販の革靴は、ガラス加工のタイプが多いです。
スムースレザー は、どちらのタイプにせよしっかりと手入れをしてあげる事が大切です。金額に関係なく、自分の気に入った革靴と同じものは二度と手に入らないかもしれません。長い付き合いをするには、愛情を持った手入れが大切です。
そもそも、革靴を大切だと思っていない大人も多い中、この記事を読んでいるという事は革靴を大事に思う気持ちがあると言えます。革靴の手入れだけで一線を引き、一目置かれる事は証明されています。この後ご紹介する手入れ方法も是非挑戦してみてください。
クリームの色を組み合わせる
基本のブラッシングにカラークリームを使用した手入れ方法があります。そのクリームの色を選ぶ時に、どうも納得の行くカラーがなかったり、革靴と微妙に違うカラーのクリームを持っていたり、あまり多くのクリームを持つのも手に余る場合などには、「クリームの色を自分で作る」という手段もあります。筆やブラシ、パレットを使用します。
パレットに、クリームを米粒2~3粒ほど取ってすこしずつ混ぜて好みの色を作っていきます。クリームは極少量で構いません。しっかりと色を混ぜて色ムラを出さないようにクリームを作ります。クリームが出来上がったら、あとはクリームを革靴に馴染ませて ブラッシング を施し、仕上げ磨きをすれば完成です。この手順はクリームを使った基本の手入れの仕方と同じです。
クリームを混ぜる時の注意点は、同じブランドやメーカー同士を合わせる事です。成分や配合は各ブランドにより異なるので、効能が変わってしまいます。
パレットは画用紙や厚紙などで大丈夫です。ブラシや筆は、小さい手入れ用の物が販売されています。ペネトレイトブラシが最適です。ペネトレイトブラシは、コバや隙間、メダリオンなどの装飾部分のクリームを塗布する時に使用します。その小ささは万能で、クリームの色を混ぜる時にも便利です。クリームの付いたブラシは、40℃ほどのお湯でゆすいで定期的にクリームを落としてあげましょう。固まってしまうのを防ぎます。
このクリーム同士を混ぜて色を作る方法で、クリームのカラージプシーから脱却できるかと思います。
クリーナーで革靴を綺麗にしてから色を入れる
クリーナーでクレンジングをしてあげる事で、革靴の下地をクリーンにしクリームや成分が良く入るように整えてあげます。古いクリームが残っていると新しいクリームはうまく入りません。クリームを使用する手入れの内3回に1回はクリーナーを使用するのが目安です。
革靴クリーニングの手順
クリーナーを使用した革靴のクリーニングの方法をご紹介します。まずは ブラッシング でしっかりとほこりやゴミを払い落とします。表面に見える細かい汚れが残っていては、効果も薄くなります。クリーナーの使い方はいたってシンプルですが、加減が難しい工程です。
クリーナーを使用する前に、素材によってシミや色落ちする場合があるので、目立たない部分で試してから使用しましょう。革靴にシミや色落ちが見られないのであれば、施術に入ります。
「1:指に布を巻いてレザークリーナーで汚れを落とす」
人差し指と中指を一緒に布で包みます。薬指も一緒に包んで構いません、やりやすい方で施術しましょう。曇りや汚れが気になる部分は小さな面積ごとに円を描くように丁寧に落とします。この時、革靴に直接クリーナーを塗らないでください。必ず布に取ってから革靴に塗っていきます。そして、クリーナーは強い素材です。少しづつ、多くを取らないように気を付けましょう。
「2:クリーナーを塗り伸ばす」
部分的な汚れ落としが完了したら、革靴全体にクリーナーを塗り伸ばします。クロスで大きい範囲を一気に覆い、手のひら全体を使って伸ばしていきます。クリーナーが一箇所に偏らないように手の動きを往復させます。革靴全体を手のひらで撫でるイメージです
「3:余分と汚れはしっかりと落とす」
最後に乾いたクロスでしっかりと全体を拭き取ります。綺麗なクロスを使い、面を変えながら拭きます。落とした汚れを再び革靴につけない事を心がけましょう。クリーナーの成分が多く革靴に残ってしまうと、そこから色落ちなどのトラブルが発生する事があります。
クリーナーの量は少量で。拭き残しや伸ばし忘れが無いようにしっかりと加減しましょう。クリーナーも、各ブランドやメーカーで販売されています。革靴のクリームと同じブランドを選ぶのが一番良いかと思います。それぞれの成分や特徴は、手入れセットやアイテムの統一感があれば更に生かされる事になります。
鏡面磨き・鏡面仕上げ(ハイシャイン)
スムースレザー の表情の美しさといえば、つま先の輝くような美しい光沢。自分の顔が写るほどの艶感を生み出す鏡面磨き・鏡面仕上げ、ハイシャイン。全体が美しい光沢を持つコードバンとは違う光沢感の楽しみ方が、 スムースレザーシューズにはあるのです。それは、革靴の命ともいえるつま先に宿ります。
そんなハイシャインの出し方もいたってシンプルです。ただ、奥が深く誰にでもすぐ習得出来るとは言えません。職人が熟練の技で仕上げた出来栄えには勝りません。ただ、根気よく磨く事で、必ず美しく磨き上がります。その光沢と艶の奥深さは、自分が愛用の革靴にかけた大事な時間を物語ります。では、ハイシャインの手順に入ります。
鏡面磨き・鏡面仕上げ(ハイシャイン) の手順
ブラッシング とクリーナー、クリームで栄養やカラーを与え整えた後に艶を出します。つま先とかかと部分だけであれば、油性ワックスやポリッシュを使用します。革靴全体に艶を出したい場合は油性クリームを使用しますが、側面部分も含めて鏡面磨き・鏡面仕上げ(ハイシャイン)にする事は熟練のプロ以外ほぼ不可能です。
ただ綺麗な艶は出ますので、下準備として塗布しましょう。鏡面磨き・鏡面仕上げ(ハイシャイン)は、あくまでもつま先(とかかとの芯が入っている部分)に美しく深い艶を与える事が定義です。
「1:美しい光沢を出す為に下地を作る」
つま先部分にワックスを塗ります。直接指もしくは布を巻いた指でワックスを取り、つま先部分に塗り込みます。指の腹にうっすらと付く程度の極少量で構いません。
つま先部分にくるくると円を描きながらなじませます。この時、直接指で塗布した方が体温が伝わりなめらかに伸びます。ワックスで表面の凹凸を埋める事で、艶を引き出す土台を作ります。ニュートラルタイプがあるので、その無色ワックスが便利です。塗り込んだ後は3分ほど置き乾かします。
「2:二度目を塗り込む」
つま先表面が乾きマットな質感になったら、その後もう一度ワックスを塗り込みます。この二度目に塗布するアイテムは、同じワックスでも、専用のグロスやポリッシュ、ハイシャイン用のアイテムでも構いません。
より艶を出せるような、自分の好みに合ったアイテムを使用します。各メーカーで多様な種類が販売されています。艶出しにはサフィールが定評があり、アイテムも豊富です。
「3:クロスで磨きあげる」
二度目の塗布が終わり乾くのを待ちます。その間に指にクロスを巻きます。2本か3本の指を巻きますので、薬指は自分のやりやすいよう好みで一緒に巻くか、出すかします。そのクロスで巻いた指の腹の部分に極わずかな水を取ります。指先が少し湿るほどで、全体を浸したりはしません。ブランドによっては同時にワックスも指に巻いたクロスに取ります。そして、その状態で約10分は、素早く手を動かして磨きあげていきます。
根気がいりますが、磨かないと艶は出ません。途中で諦めてしまうと、つま先がマットな質感のまま終わってしまいます。根気よく、光沢が出てくるまでずっと磨き続けます。満足のいく光沢がでたら、つま先の余分な油分をクロスで拭い、完了です。
満足のいく光沢が出せたのであれば、次はもっと綺麗な光沢を出せます。回数を重ねるほど、その革靴のクセや表情も見えてくるので本当におもしろいです。ちなみに、ハイシャイン専用のクリーナーもあるので、リトライの際は使用した方がよりクリーンなつま先に出来ます。
スムースレザーは、奥が深く、手入れをしようと思ったら沢山の方法やアイテムがあります。それは、決して無駄にはならない男の嗜みです。切る事はない革靴との関係を、より深めておもしろさを見出してみてはいかがでしょう。特に磨けば光ってくれる素直なレザーという素材は、きっと自分の手入れの努力に答えてくれます。愛用の革靴と素敵な長い付き合いを、是非。