”# What is Berluti?”
ベルルッティ(Berluti)はフランスに本拠地を置く、繊細かつラグジュアリーなファッションブランドです。ベルルッティ(Berluti)と言えばレザーアイテム 特に靴や財布、そしてバッグを思い浮かべる方が多いのですが、現在ではアパレルや香水・フレグランス、アクセサリー等も手掛ける革靴を中心としたハイブランドとして、ルイヴィトンを中心としたファッション界のメガコングロマリット【LVMHグループ】の一翼を担ってます。
希少性の高い素材を使い、それに見合った技術で生み出される製品はどうしても高価で、そのステータスの高さが注目されがちです。しかし、それだけでなく老舗ブランドならではの伝統と革新という姿勢を理解しなければ、相応しい所有者とは言えません。ベルルッティ(Berluti)の歴史、歩んできた120年余の経緯について紹介していきます。
『ベルルッティ(Berluti)』とは?
イタリア生まれである創業者 アレッサンドロ・ベルルッティが、パリで靴作りの仕事を始めます。これがベルルッティの創業でした。そして1895年に注文靴=カスタムメイドを取り扱う、自身の名前を冠したサロン、ベルルッティ(Berluti)を開設します。するとアレッサンドロの靴づくりは評判を呼び、フランスだけでなくヨーロッパ全土の富裕層から圧倒的な支持を得るようになります。
その後もベルルッティ(Berluti)は紳士注文靴=カスタムメイドを中心とした事業展開を続けていましたが、3代目のタンビニオは大きな事業展開を図ります。それは時代にあった既成靴業界への参入であり、レディースコレクションの発表でした。現在まで続くベルルッティ(Berluti)というブランディング、その礎はここからより強固なものになっていきます。
ベルルッティ(Berluti)ならではの技術や意匠
ベルルッティ(Berluti)は靴作りを通じて高い技術や素材選び、また独特の意匠を持っています。 主に素材として使うベネチアンレザーは、4代目の当主オルガが生み出したものです。独自の審美眼にあった鞣(なめ)し技術を重ねることで、唯一無比の素材が誕生しました。
さらに彼女は、このレザーに『パティーヌ』という染色方法を施すことで、さらに独自性を高めていきます。塗り重ねることで奥行きが生まれ、磨き上げることで艶が浮き出してくると言います。 つまり同じデザインの靴、また財布・バッグであっても醸しだす表情がすべて違い、使い方によって変化が加わるのです。
カリグラフィと呼ばれる文字を刻んだ意匠はベルルッティ(Berluti)を代表するアイコンと言えるでしょう。ルイ15世の芸術的な手紙の書体からインスピレーションされたと言われ、靴やバッグや財布の表面に文字を彫ることで、他にはない存在感を放っています。
技術やデザインとは違いますが、ベルルッティ(Berluti)の靴を履くのであれば、『ベルルッティ結び』を習得する必要があります。エラガントでありながら解けづらい、そして靴のフォルムがキレイに映るという結び方までベルルッティ(Berluti)は用意しています。
著名人に愛されるベルルッティ(Berluti)
ベルルッティ(Berluti)に魅了された著名人といえば、イギリス王室からウインザー公、芸術界ではパブロ・ピカソやジャン・コクトー、映画監督のフランソワ・トリュフォーなどが挙げられます。またモダンアートの巨匠アンディ・ウォーホルは、 イブ・サンローラン の紹介で顧客になりました。
ベルルッティ(Berluti)にはスワンクラブという、食事と靴磨きを楽しむサロンが開催されています。中田英寿氏はホスト役を務めるほどの愛用者であり、出席者には芸能界やスポーツ界さらに歌舞伎界や実業界まで、錚々たる方々が名前を連ねます。
ベルルッティ(Berluti)の挑戦
近年ベルルッティ(Berluti)はアパレル分野でも注目されています。2016年からクリエイティブディレクターを勤めたハイダー・アッカーマンは、完璧なコレクションだと高い評価をうけ、ベルルッティ(Berluti)の新境地を開拓しました。
しかし彼は2018年で退任、後任には11年間Diorを牽引してきたクリス・ヴァン・アッシュが就きました。そして新しいコレクションは、2019年秋冬シーズンから正式に発表されました。ベルルッティ(Berluti)は、また新たな扉を開けてくれたのです。
4代名当主オルガ・ベルルッティが放つ光明
ベルルッティ(Berluti)の成功は、4代に渡りブランドを支えてきたベルルッティ家各当主の才能と努力にあると言ってもいいでしょう。 中でも1968年から現在まで当主を務める4代目のオルガ・ベルルッティは、先達を敬いながらも女性ならではの大胆な切り口でベルルッティ(Berluti)を新たな高みに押し上げてきました。彼女が関わった革新について整理してみると、その先見性が理解できます。
それは企業イメージを一新したとか、企業コンセプトを構築したというレベルではありません。ベルルッティという思想、もしくは哲学が誕生したと言ってもいい偉業です。
ベネチアンレザーとパティーヌ
これについては前述の通り、ベルルッティ(Berluti)だけに許された素材であり、ベルルッティ(Berluti)だけが成し得る染色技術です。他ブランドにもパティーヌを施した、ベルルッティ(Berluti)を思わせる素材が見つかりますが、やはりオリジンとしての奥深さは較べようがありません。
カリグラフィーやタトゥ
カリグラフィーとは美しい筆記文字を手作業で刻み込む技術で、使いこむ程に文字が鮮明になり存在感を訴求してくれます。タトゥとは肌に刻み込む手法そのままに、文字や文様を墨を入れながら唯一性を明確にする手法で、アメリカ人タトゥアーティストのスコット・キャンベルとのコラボレーションで生まれました。
いずれも美しさだけでなく、妖しい毒、魅力よりも魔力をたたえ、ずっと見つめていたい衝動から逃れる事は出来ません。
美しいローファー アンディの誕生
初代当主がデザインに関わったアレッサンドロは、ベルルッティの中でもっとも美しい靴とされ、長きに渡り人気の耐えないモデルです。そしてオルガ自らデザインに関わった美しいローファー アンディもスリッポンタイプでありながらエレガントな印象のある、ベルルッティを代表するモデルです。
このモデル誕生にはアンディ・ウォーホルの存在があります。彼はイブ・サンローランの紹介でベルルッティを訪ねたのですが、気にいったものが見つからなかったそうです。そこでオルガが『では作りましょう。』となり、生まれたのがこのモデルのオリジンでした。
ウォーホールもいたく満足し、それをモチーフとしたモデル、アンディという名前を冠したモデルの誕生を喜んで受け入れてくれたそうです。 他にもアパレルやアクセサリー分野への進出、LVMHグループへの参加、ハイダー・アッカーマンやクリス・ヴァン・アッシュ等のクリエイティブディレクターの選定についてもオルガの意見が影響しているとみてもいいでしょう。
しかし、もっともオルガらしい光明は『靴を磨きなさい。そして自分を磨きなさい。』という言葉を残したことにあります。さらに磨いたあとは、お日様の下では色が覚めてしまから、月の光の下で眺めるようにと助言しています。
また前述したベルルッティ(Berluti)愛好家のために催される食事と靴磨きを楽しむスワンクラブでは、靴磨きの最後にクリュグやモエといったシャンパンを含ませた布で艶を上げ、立ちのぼる香りを楽しむのだとか。
革靴や革製品またアパレルといった『モノ』だけでなく、このようなベルルッティ(Berluti)という思想や哲学が、わたし達を惹きつけてやまないのです。それはオルガ・ベルルッティの生き方であり、美しいものへのオマージュに他なりません。
まとめ ベルルッティ(Berluti)と向き合う。
商品ではなく、ベルルッティ(Berluti)が生み出した価値、独自性について紹介してきました。それは技術や手法に留まらず、4代に渡るベルルッティ(Berluti)の歴史と各当主の偉業に触れることでした。 ベルルッティ(Berluti)は今も進化し続け、呼吸を止めることはありません。現代当主であるオルガ・ベルルッティの動きに、これからも目が離せません。